「応援に来てもらう職人にいくら払うか」「取引先に単価アップをどう切り出すか」——人工(にんく)単価の"相場"を調べても、業界共通の定価は存在しません。単価は最終的に、取引先との取り決めで決まるものです。

ただし、国が毎年公表している公式の水準がひとつだけあります。国土交通省の公共工事設計労務単価です。この記事では、令和8年(2026年)3月から適用されている最新の単価を職種別に一覧化し、あわせて「この数字をそのまま自分の請求単価にしてはいけない」という大事な注意点と、自分の単価を決める手順をまとめました。

人工単価の「公式の目安」=公共工事設計労務単価とは

公共工事設計労務単価は、国(国土交通省・農林水産省)が公共工事の予定価格を積算するために毎年決めている、職種別・都道府県別の賃金水準です。

大事なのは、この数字が机上の理想額ではないことです。ベースになっているのは昭和45年から毎年続く「公共事業労務費調査」——実際の工事現場で技能者に支払われた賃金の実態調査です。令和8年3月適用分では、令和7年10月に施工中だった1件1,000万円以上の工事から無作為抽出した有効10,031件・技能者85,670人分の賃金台帳をもとに集計されています。つまり「実際に払われた賃金の統計」であり、人工単価を考えるうえでもっとも信頼できる公式の基準点です。

単価は47都道府県×51職種で個別に設定され、金額は所定労働時間内8時間あたり——つまり、おおむね「1人工」に対応する水準として読めます。

【2026年版】職種別の単価一覧(令和8年3月適用・全国平均)

令和8年2月17日に公表され、令和8年3月から適用されている最新の単価のポイントは次のとおりです。

主要12職種の全国平均値は次のとおりです。

職種全国平均値(円/8時間)前年(令和7年3月)比
型わく工31,671+5.0%
鉄筋工31,267+4.6%
とび工30,780+4.0%
左官30,508+4.1%
大工30,331+3.1%
運転手(特殊)29,442+4.8%
特殊作業員28,111+4.3%
運転手(一般)25,275+2.9%
普通作業員23,605+3.0%
交通誘導警備員A18,911+5.8%
軽作業員18,605+2.9%
交通誘導警備員B16,749+6.7%

表の読み方の注意: 金額は全国の加重平均値です(伸率は単純平均で算出)。実際の単価は都道府県ごとに設定されており、地域差があります。自分の県・自分の職種の単価は、記事末尾の出典(国土交通省の公表資料)で確認できます。電工・塗装工・溶接工など主要12職種以外の職種も、51職種すべてに単価が設定されています。

推移で見ると、全職種平均は平成24年度の13,072円から25,834円へ、この14年でほぼ2倍になりました。「何年か前に決めた単価のまま」なら、水準が大きく動いている——これがこの表のいちばん実務的な使いどころです。

そのまま請求単価にしてはいけない——単価表の正しい読み方3つ

① これは「公共工事の積算用」の水準——民間の定価ではない

設計労務単価はあくまで役所が公共工事の予定価格を計算するための単価で、民間の取引を直接縛る定価ではありません。実際の人工単価は取引先との合意で決まります。ただし位置づけは年々重くなっており、建設業法にもとづいて中央建設業審議会が勧告した「労務費に関する基準」では、公共・民間を問わずすべての建設工事の請負契約で確保されるべき「適正な労務費」の計算の基礎となる水準とされています。つまり「参考値」から「守られるべき水準の物差し」に近づいています。

② 事業主の必要経費分が含まれていない(いちばん大事)

国土交通省は公表資料でこう明記しています——「公共工事設計労務単価には、事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません」。含まれるのは基本給相当額・手当・賞与など労働者に支払われる賃金部分だけで、法定福利費の事業主負担分や研修費用などの経費は別枠(積算上は現場管理費等)です。

ここが一人親方には決定的に重要です。一人親方は自分自身が事業主——国保や国民年金、労災の特別加入、道具・車両・燃料といった経費は、ぜんぶ自分の請求額の中から払うことになります。設計労務単価をそのまま請求単価にすると、雇われの職人なら会社が持ってくれる経費分だけ、実質の手取りが目減りする計算になります。だからこの表は「上限の相場」ではなく、下限側の目安として読むのが正しい使い方です。国土交通省自身も「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」とまで書いています。

③ 8時間あたりの水準——残業・休日の割増は別

単価は所定労働時間内8時間あたりの水準で、時間外・休日・深夜の割増賃金や、通常の作業条件を超えた労働への手当は含まれていません。夜間工事や休日対応が多い仕事なら、その分は単価とは別に取り決めておく必要があります。

自分の人工単価の決め方(3ステップ)

ステップ1: 基準点を調べる(自分の職種×自分の県)

まず、国土交通省の公表資料で自分の職種・自分の都道府県の設計労務単価を調べます。この記事の表は全国平均なので、地域の実勢とはずれがあります。ここで調べた数字が、交渉にも使える客観的な基準点になります。

ステップ2: 自分の必要経費を上乗せする

次に、②で見たとおり基準点に経費分を上乗せします。考え方はシンプルで、年間の事業経費(保険料・道具・車両・燃料など)を年間の稼働人工数で割れば、「1人工あたりに乗せるべき経費」が出ます。たとえば年間経費の合計を年間200人工で割る——自分の数字で計算すると、「これ未満で受けると経費を払った残りが賃金水準を下回る」というラインが見えます。国土交通省も、労働者の雇用に伴う必要経費を含めた金額を参考値として別に示しており、「賃金+経費」で考えるのが公式の整理です。

ステップ3: 金額と一緒に「数え方」も取り決める

単価の額と同じくらい揉めやすいのが数え方です。半日は0.5人工か、午後からの早上がりは1人工か、手元(補助)の単価はいくらか、締め日と支払いサイトは——最初の請求の前に、金額とセットで取り決めておくのが確実です。日々の人工数の記録方法は「出面表の無料エクセルテンプレート」の記事で詳しく解説しています。

なお、単価アップを相談したい場合、「国の設計労務単価がこの3年で毎年4〜6%上がっている」という公表データは、感覚論ではない交渉材料になります。言い方や取引関係はそれぞれなので断定はしませんが、根拠の数字を持って話せることは確かです。

よくある質問

Q1. 人工単価に法律上の決まりや定価はありますか?

ありません。単価は取引先との取り決めで決まります。ただし国が毎年公表する公共工事設計労務単価(令和8年3月適用の全国全職種平均25,834円)が公式の水準として存在し、実際に支払われた賃金の統計にもとづくため、客観的な基準点として使えます。

Q2. 設計労務単価をそのまま自分の請求単価にしてもいいですか?

おすすめできません。設計労務単価は賃金部分のみの水準で、事業主が負担すべき必要経費分は含まれていないと国土交通省が明記しています。事業主である一人親方がそのまま使うと、経費分だけ実質の手取りが目減りします。

Q3. 2026年の大工の人工単価の目安はいくらですか?

令和8年3月適用の設計労務単価では、大工の全国平均値は30,331円(前年比+3.1%)です。都道府県別に単価が異なるので、自分の県の数字は出典の公表資料で確認してください。

Q4. 単価の相場は毎年変わりますか?

変わります。毎年の実態調査にもとづいて改定され、平成25年度から14年連続の引き上げが続いています。この記事も毎年の公表(例年2月頃)に合わせて更新します。

単価が決まったら——人工数×単価を、そのまま請求書に

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単価アップの交渉にも、応援への支払いにも、まず必要なのは正確な人工数の記録です。請求書の書き方そのものは「人工(にんく)代の請求書の書き方【記入例つき】」で解説しています。

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出典(一次資料)


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